ヴィパッサナー瞑想
これから瞑想の技法(テクニック)をいくつか紹介していこうと思いますが、読んでみたなかでなんとなく惹かれる瞑想法が見つかったら、それらを実際に試してみてください。
伝統的な瞑想法から、現代的な瞑想法まで、代表的なものをいくつか紹介します。
ヴィパッサナー瞑想は、現在世界中でもっとも広く行われている瞑想法だといえます。
ヴィパッサナー(vipassana)とはサンスクリット語で、ものごとを・あるがままに・観照する・という意味ですが、通常、ヴィパッサナー瞑想というときには、呼吸の出入りに意識をおいて、同時に周囲で起こっているあらゆる出来事に気づいている、というひとつの瞑想技法をさしています。
もともとはアナパナ・サティ・ヨグというヨガの呼吸瞑想法でしたが、ブッダ自身が修行中からおこなっていた瞑想法でもあり、後にブッダがたびたび雨期の定住地でこの瞑想法についての講義をおこない、パーリー語の経典には、この技法にたいするくわしいブッダ自身の講義(経典)がたくさん残されています。 たいへんわかりやすく、おもしろく、実際的に、くわしく説明されてますから、機会があったぜひ読んでみることをおすすめします。
ブッダの死後、仏教が外国へも枝分かれしていく過程で、この瞑想技法に少しずつ細かな違いができてきましたが、おもに呼吸を意識して見守るという基本的な技法は同じです。
仏教は皮肉なことに発祥地であるインドでは消滅してしまいましたが、その教えは他のアジアの国々に広範囲に広まっていきました。
南にはスリランカがあり、そこでのヴィッパサナー瞑想は、呼吸とともに動く腹の動き・感覚に焦点をあわせて観照する、という技法になっています。
東のミャンマーでは、はじめに呼吸を鼻の先端で見守り、その空気が鼻に触れるときの感覚(冷たいとか、暖かいとかいう、実際的な、身体的な感覚)、それを身体の細部にいたるまで、緻密に、ひとつひとつ、冷静に、観照するという技法になりました。
タイでは、近年にいたるまで、あまり瞑想の技法というものは修行されませんでしたが、アーチャン・ブッダダーサがスアンモク森林寺院に居をかまえて、パーリ経典にもとずくアナパナ・サティ・ヨグを紹介してから、タイのほかの寺院でも実習されるようになっています。
その技法は、呼吸の出入りを気づきをもって見守ること、ブッダは、「アナパナ・サティ・ヨグを実習する僧は、樹下に坐り、静かに瞑目し、呼吸に意識を集中し、・・・熟練したろくろ師がろくろをひくときに、長くひくときは長くひいていることを知り、短くひいているときは短くひいていることを知っているように、長く呼吸しているときは長く呼吸していることを知り、短く呼吸しているときは短く呼吸していることを知っている・・・」というような説明からはじまり、その技法をいくつかの段階にわけて、その進展の過程でおこるさまざまな体験と判断についての注意を喚起しています。